機能性表示食品は、健康を維持・増進していくために効果のある成分を配合した食品のことです。食品にある成分を配合して医薬品やサプリメントなどに似ている機能をもたせているため、医薬品や他の健康食品との相互作用や成分の過剰摂取に注意する必要があります。
今回は、機能性表示食品と医薬品や食品の相互作用について紹介します。
機能性表示食品とは、国が定める一定の基準を満たしていれば、その栄養成分や効能を表示して販売できる制度です。機能性表示食品として発売するためには、商品の発売前に国に対して安全性と機能性の科学的根拠などを届け出る義務があります。
トクホとは異なり国が審査を行うわけではないので、あくまでも事業者の責任のもとで科学的根拠が確認されている商品となっています。事業者によって国に提出された書類が受理されると消費者庁のwebサイトで公開されるため、誰でも簡単にインターネットを使用して商品の情報や効能を調べることができます。
国に承認されてから60日間問題がなければ、スーパーやドラックストア、ネットショップなどで販売がスタートされます。
お腹の調子を整えたり、脂肪の吸収を穏やかにする、お通じを良くするなどといった特定の身体の効能が期待できる機能性表示食品は、スーパーやドラックストア、インターネット販売などで簡単に購入することができます。
成分が配合された食品とはいえ食品としての認識が強い人が多いため、他の医薬品やサプリメントなどへの影響を軽視してしまう人もいるようです。機能性表示食品などの健康食品の場合、医薬品ほど効き目が顕著でないなどの理由から医薬品に比べて副作用が少ないと思い込んでいる人もいます。
しかし実際は、医薬品や他の健康食品などとともに摂取すると影響を及ぼしてしまう可能性があるので、かかりつけ医や薬剤師に確認することをおすすめします。
食品同士に食べ合わせがあるように、医薬品と食品にも相性が良くない食べ物や成分があります。食品と医薬品を同時に摂取したときに、医薬品の効能に負の影響を与えた場合は薬の効果が弱くなり、逆に正の影響を与えた場合は効きすぎの状態となります。
どちらの場合も薬の効果が正しく得られないので、治療の上で大きな問題となります。効能自体に影響がなかった場合でも副作用に何らかの影響が及ぼすこともあります。思いがけない症状の副作用が出現したり、副作用そのものが強く出てしまうということもあり得るのです。
これらの現象は作用機序の違いから薬物動態学的相互作用と薬理学的相互作用に分けられています。薬物動態学的相互作用は、経口薬を服用した後にある成分を摂取した場合、吸収・分布・代謝・排泄のどこかの過程で影響が起こることです。
具体的には薬物血中濃度が変化したり、食品に含まれているある成分が薬の代謝に影響を及ぼしたり、体内の栄養状態が変化してしまうことによって薬の体内分布が変わってしまうことなどが挙げられます。もう一つは、薬理学的相互作用です。
医薬品や食品のそれぞれがもつ生理作用が原因で起きる相互作用で、薬と同じ成分をもつ食品を摂取したことによって薬が効きすぎてしまったり、効かなくなってしまったりと薬の効き方に影響を及ぼしてしまうことです。
機能性表示食品と薬の食べ合わせによる相互作用がある成分の一例には、ビタミンKやコエンザイムQ10、カルシウムなどがあります。
ワルファリンなどの抗血栓薬は、肝臓でビタミンK依存性の血液凝固因子を阻害して血栓形成の予防をしています。ビタミンK を多く含むクロレラや納豆、緑黄色野菜を摂取してしまうと薬の効果を弱めてしまうため、血液凝固が起こりやすくなると言われています。
緑黄色野菜は通常の3食の食事で摂るぶんには問題ありませんが、青汁などで一度に摂る場合には量を減らすなどして控えるようにします。また、納豆やクロレラなどは控えるようにしましょう。
コエンザイムQ10を摂取することによって、スタチン系薬剤の血中コレステロール降下薬の副作用である横紋筋融解症を予防する可能性があると期待されています。副作用である横紋筋融解症がコエンザイムQ10の合成力が低下したことによって起こるとされていて、スタチン系薬剤の血中コレステロール降下薬とコエンザイムQ10を服用することで副作用予防や症状の軽減があると考えられています。
牛乳やヨーグルトなどに多く含まれるカルシウムは、ニューキノロン系、テトラサイクリン系、セフェム系の抗菌薬の成分と結合して、抗菌薬の薬の吸収や作用を低下させることがわかっています。抗菌薬を服用後2時間を目安にカルシウムの摂取を控えるようにしましょう。
また、消化性潰瘍薬や骨粗鬆症薬とカルシウムと一緒に摂ると、高カルシウム血症などの副作用が現れることがわかっているので注意が必要です。
機能性表示食品は事業者が科学的根拠に基づいて食品の評価を行い、国が定めた一定の基準を満たしていれば国に申請をして機能性表示食品として販売できるという制度です。
国に申請をするに当たって、事業者による安全性の評価と機能性の評価が行われます。安全性の評価の中で、医薬品との相互作用などについての評価も行われていますが、やはり機能性表示食品を利用する際に医薬品との飲み合わせや成分の過剰摂取などに注意すると健康被害を避けることができます。
機能性表示食品に疾病の予防や治療の補助を期待する方が多いため、何らかの病気を治療しながら機能性表示食品を利用しているという方も多いのではないでしょうか。機能性表示食品には、医薬品と相互作用を起こす可能性のある成分が一般的な食品よりも多く含まれていることがあります。
機能性表示食品を利用するときには、必ず医師や薬剤師の指示に従うことをおすすめします。
機能性表示食品は、身体に優しい効能がある成分が含まれているので、健康の維持や増進の手助けをしてくれます。しかし、一般的な食品に成分を配合して作られているので、医薬品の効果に影響してしまうことがあります。
特に現在医薬品を服用している方が機能性表示食品を利用する際には、医薬品などの相互作用がないか医師や薬剤師に確認してから利用することをおすすめします。
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